第29章 最後の出航
そうしてメルディアとの別れの時がやってくる。
船を降りて別れを言いたかったが、さっきの今だったため、船の上でいいと制された。
「じゃあ、一度ここでお別れね。……また、すぐに会いに行くわ。」
少ししたら、メルディアもすぐに向かうつもりでいた。
本当はこの船で一緒に行きたいくらいだ。
「…忙しいでしょう? 無理しないで。」
彼女は商人として駆け出したばかりの上、絵画の展示準備だってあるはず。
自分のために無理はしないで欲しかった。
「無理するに決まってるでしょう。どっちが大切だと思っているの。」
バカな子…、と抱擁されて 目の奥が熱くなる。
「うまくいくことを願ってるわ。」
本当は、心のどこかで失敗すればいいと思った。
でも、モモを応援すると決めたから、絶対にそんなことは言わない。
「覚えていて、どんな結果になっても、私だけはあなたの味方よ。」
「うん…。」
2人の間で交わされた抱擁は、ローたちの目からはただの別れの挨拶に映った。
「出航するぞ!」
今度こそ錨が上がり、船が動き出す。
港で見送るメルディアが手を振る。
モモも手を振り返した。
「よっしゃ、シルフガーデンへ全速前進~!」
追い風を受け、帆が張る。
ハートの海賊団の船は大海原へと出航した。
メルディアは海賊船が小さくなるまで、ずっと見送っていた。
「行ってらっしゃい、モモ。最後の航海へ。」