第27章 決意
「俺の夢が叶うこと…?」
思いもよらない答えだったのだろう、ローは意外そうに復唱した。
「そうよ。」
「そりゃ…お前、夢って言うのか?」
「言うわ。だって、今のわたしにとってなにより大事な夢だもの。」
世界一の薬剤師になることも、もちろん大事。
でも、それよりも、ローがコラソンに代わってドフラミンゴを止めることを、モモはなにより望んでいる。
これは、わたしの立派な夢。
「お前がそれを夢だと言うなら、止めやしねェよ。だが、お前が思ってるより、この夢は遥かに難しい。」
少しの間だが、ローはドフラミンゴの部下だった。
だから あの男の強さも、夢の難しさも、誰より理解しているのだ。
「難しくても、やり遂げるのでしょう?」
「…当然だ。」
「なら、わたしも ローのことを応援するわ。…どんなことがあっても。」
ローは寄り添うモモの腰を抱き、いっそう引き寄せた。
「そうだな…。お前がいれば、どんな敵でも倒せられる気がする。」
彼女は自分に見えない力を与え続けてくれるのだ。
「…じゃあ、ロー。約束してくれる? なにがあっても、諦めないって。」
「そんなの、当たり前だろうが。」
約束するまでもない、とローは笑った。
「……。」
モモは寒さに震えるフリをして、ローの胸に顔を押しつけた。
ねえ、ロー。
わたし、決めたのよ。
あなたの夢を叶えるって。
だから、あなたも約束して。
絶対、諦めないって。
なにがあっても、絶対、絶対。
だからね、
だから、わたし…。
もう、決めたの。
「寒いのか…?」
抱きつくモモの身体は少しだけ震えていた。
モモは無言のまま頷く。
「だから船にいろと言ったじゃねェか。…もう、戻るぞ。」
「……ッ。」
立ち上がろうとするローを強く抱きしめて引き止める。
「な、なんだよ…。…仕方ねェな、もう少しだけだぞ。」
ローの手が優しく髪を撫でる。
彼の優しさに甘えて、寒さを理由にして、俯いたままのモモの頬に、涙がつたうのを誰も見てはいなかった。
落ちた涙は、ドラム王国の雪に吸い込まれていった。