第26章 魔女とトナカイ
モモの歌は風に乗り、ココアウィードの町、そして隣町のビッグホーンの村にまで届いた。
「ゴホゴホ…。……? あれ、咳が止まった…。」
「俺もなんだか、今日は調子がいいなー。」
「おかあさん、頭いたいの…なおったよ。」
「あら、本当だわ…。熱が引いてる。急にどうしたのかしら、良かったわ。」
モモの歌は、遠く離れたあの山にも届いた。
「……ん。」
「どうしたんスか、船長。」
怪訝そうに眉を寄せるローに、ペンギンは尋ねた。
「いや…、急に体力が回復した。」
「本当ッスか? さすがモモの薬酒ッスね!」
「……ああ。」
そう返事をしながらも、ローは首を傾げた。
本当に薬酒の効果だろうか。
それにしては急に回復し過ぎだ。
しかし、いくら考えても答えなど出るはずもなく、薬酒の効果だと納得せざるを得ない。
樹の上から山の麓を見下ろす。
標高5000メートルのドラムロッキーからは、この島全体が見渡せるのだ。
なんだか、島が、町が、さっきより元気になっているような気がする。
(まぁ…、気のせいだろうが…。)
もうすぐ日が暮れる。
王城へ侵入するときは近い。
ローは静かにその時を待った。