第25章 医者がいない島
「なあ、聞いてくれよ。この間、聖地マリージョアで“世界会議”があっただろう。」
「ああ、国政に興味のないワポル様も出席したアレだろ。」
“世界会議”というワードにシャチとペンギンは思わず動きを止めた。
各国の統率者が出席する“世界会議”は数年に1度、政府お膝元、聖地マリージョアで開催される。
軍に所属している者が、そんな重要なことをこんな店で口開くとは、この国はどこまで堕ちているのか。
「ほら、2年前、例の“ヒルルク事件”で元守備隊隊長のドルトンさんが投獄されただろ?」
“ヒルルク事件”?
この国では2年前になにか大きな事件があったようだ。
「だからワポル様の護衛に、今回は俺も参加したんだ。」
「そういえば、そうだったな…。」
「“世界会議”があんなにすごいもんだと思わなかったよ。なにせあの人がいたんだ。噂にゃ聞いていたが、遠目からでもチビるくらいのド迫力だったぜ。」
「あの人?」
「ほら、4年前、かの国の王となった…--」
「船長、今回の“世界会議”に誰がいたと思います?」
まるで焦らすかのように言われたシャチの問いに、ローは苛立ちを募らせた。
「…早く言え。」
言われなくても早打ち始めるローの心臓が、あの人だと告げている。
「ドレスローザ現国王 ドンキホーテ・ドフラミンゴ。」
ドクン…ッ。
心に染み付いたかつての憎しみが、恨みが、じわじわと溢れていく。
凍てつく冬島。
そうだ、ここはまるで、あの日のミニオン島のようではないか。
「…ヤツの情報が欲しい。王宮に忍び込むぞ。」
次の瞬間、ローは2人に向かって そう言い放っていた。