第25章 医者がいない島
「くしゅん…!」
モモは身震いをし、鼻をすすった。
「あれ、モモ…大丈夫?」
「う、うん…。」
身体をさすりながら、顔を覗き込んでくるベポに微笑んだ。
「なんか顔赤いよ? 風邪引いたんじゃない?」
「……。」
確かに少し熱っぽい気がする。
「なんか、ここ最近…急に冷え込んできたから。」
ついこの間までは半袖でも過ごしやすかったのに、今では上着が手放せない。
「ああ、うん。冬島が近いからね。」
「そっか…、それで。」
どうりで近頃はずっと寒いわけだ。
グランドラインでは、島が近づくと気候が安定する。
「冬島…、初めてだな。」
噂には聞いていたけど、一面銀世界だとか、バナナで釘が打てるとか、本当だろうか。
「そうなんだ。ボク、冬島が1番好きだよ。」
それは、まあ…。
外見でだいたいわかる。
「でも、今日明日で着くわけじゃないし、しばらく部屋で休んでなよ。島が見えたらすぐ知らせるからさ。」
どうやら本格的に心配させてしまったようだ。
モモは子供の頃以来、風邪を引いたことがない。
体調管理には日々気を遣っていたし、それが密かに自慢だったけど、移り気が多いグランドラインの気候はそれを許してくれないらしい。
「わかった。でも、ローには内緒にしてね。」
知られたら、それはもう大変だ。
小言から始まり、重病人扱いされ、しばらくベッドから出してもらえなさそう。
想像するだけで冷や汗が出る。
早く治してしまわないと。
「アイアイ! じゃ、ボクとモモの秘密ね。」
「約束ね。」
モモはベポと指切りを交わし、おとなしく船内に戻った。