第3章 ハートの海賊団
その日の夕方、モモはベポを見つけてその背を叩いた。
「ん、どうしたのー?」
(航海は順調?)
「うん、順調だよ。進行方向に向かって潮が動いてるから、たいした舵も取らずにすむしね。」
それは、好都合。
(どっちに島があるの?)
「あっちだよ。」
ベポが指差す方向を眺める。まだ島の影は見えない。
(…ねえ、ベポ。)
「なあにー?」
(わたし、みんなと出会えて良かった。)
ベポの手をギュッと握る。
「どうしたの急に。ボクもモモと出会えて良かったよ。」
(ベポ、わたしね、今まで友達がいたことなかったの。だから昨日、ベポが友達だって言ってくれてすごく嬉しかった。)
どこまで伝わるかわからないけど、素直な気持ちを伝えた。
(ありがとう。)
「ボクの方こそ、ありがとう!」
(もしまた会うことが出来たら、そのときも友達って言ってくれる?)
「もちろんだよ!」
ベポの答えに、モモは嬉しそうに微笑んだ。
「でもどうしたの?まだ島にも到着してないのに。」
(…なんでもないの。)
ただ、伝えたかっただけ、とモモはベポと2人、手をつないだまま沈み始めた夕日を見ていた。
ベポと別れた後、モモは海賊船に備え付けられている小舟を一隻、海に下ろした。
(ごめんなさい…。)
恩を仇で返すようなことして、ごめんなさい。
きちんとお別れを言えなくて、ごめんなさい。
でもこれ以上ここにいたら、もし次に引き止められたとき、言ってしまいそうだ。
「ここにいさせて」って。
(…さようなら。)
小舟に乗り込みロープを切ると、潮の流れに乗って海賊船からどんどん離れていった。