第23章 仮面の暗躍
未だ身動きのとれないモモを抱き上げ、ローはデッキへと上がった。
「……遅い。」
驚くことに、すでに戦いの決着はついていた。
ホーキンスが海軍船を占拠していたのだ。
「ホー…キンス…さん。」
海兵が敵襲を知らせたときは耳を疑ったが、本当に彼だったのか。
まさか海賊だったなんて。
「…無事のようだな。なによりだ。」
無表情な口角が、ほんの少しだけ上がる。
「ありが…とう…ござい…ま…。」
舌が上手く回らず、きちんとお礼も言えない。
「無理して話すな。島に戻ったら、体内の薬物を取り除いてやる。」
「………。」
それには確か、バラバラにならなくちゃいけないはず。
ちょっと嫌だなぁ。
そういえば、ヒスイは無事なのだろうか。
「ロー、…ヒスイ…は…?」
「ああ、もうオペ済みだ。安心しろ。」
自分のせいでケガをさせてしまった。
こんなことになってしまったのも自分の迂闊さ故。
後悔がどっと押し寄せた。
そんなモモの額をローは軽く小突く。
「自分を責めんじゃねェよ。今回のことは、俺の落ち度だ。…守ってやれなくて、すまない。」
自分を責めるな。と言いながら、ローこそが己を責めている。
そんなふうに言わないで。
こうしてちゃんと助けに来てくれたじゃない。
力が入りきらない手で、ローの服をギュッと握った。
「取り込んでいるところ悪いが、そろそろ撤退しないと増援が来るぞ。」
そういえば、ここはまだ敵船なのだ。
ゆっくりしている場合ではない。
行きと同じく、ホーキンス海賊団の船に乗り込んだ。
「島へ戻るぞ、舵を切れ。」
船長の命令で船はウォーターセブンへと足を進める。
本当にどうなることかと思った。
我らが船は修理中だし、海へ連れ出されて もうみんなと会えないかと本気で心配した。
それもこれも、ホーキンスのおかげだろう。
「ホーキンス…さん、本当に…ありがとうございます…。」
先ほどよりも回るようになった舌で、再び礼を告げた。
「別に、これが俺の運命だっただけだ。」
「……?」
「言ったはずだろう“お前は人の縁によって救われる”と。」
「あ…。」
そういえば、そんな占いをした。
縁とはホーキンスのこと。
やっぱり、彼の占いはよく当たる。