第23章 仮面の暗躍
「はあぁ、この世界にこんなに美味しいものがあったなんて、知らなかったわ。」
ローに散々おねだりをした結果、モモは3つのソフトクリームをお腹に収めていた。
「大げさなんだよ、たかがソフトクリームごときで。」
「ヒドいわね、ローにはあの美味しさがわからないの?」
冷たく滑らかな口当たり、溶けた瞬間の濃厚な甘さといったら、もう…。
思い出すだけで、もう1個食べたくなる。
「…まさかもう1個とか言わねェよな。」
「…………もちろん。」
だいぶ間を空けての返事に、モモの心中が丸わかりだ。
彼女は嘘がつけない。
「……ハァ。」
まさか恋人からの初めてのおねだりが、ソフトクリームだとは…。
ため息も吐きたくなる。
「ああ、ホーキンスさんの占いはコレだったのかしら。」
「…占い?」
なんのことだと聞き返せば、モモは昨日の出来事を一から話した。
ただし仮面の人のことは除いて。
だって、あの人になにかされたわけじゃないし、いたずらにローを心配させるだけだから。
「……で、近々、人生において一番の宝を手に入れるって言われたの。きっとコレのことじゃないかしら。」
間違いない! と言うモモにローは心底呆れた。
「人生最大の宝がソフトクリームとは、安い女だな。」
「そんなこと言うなら、じゃあローにとっての宝はなんなの?」
揚げ足を取るつもりで尋ねたのに、ローはあっさりと答えて見せた。
「お前に決まってんだろ。」
「……!!」
一瞬固まったのち、モモの顔はみるみる赤くなる。
「ククッ…、可愛いことだな。」
「な…ッ、ローが…いけないんでしょう!」
くそぅ、からかわれた…!
ああ、でも。
それを言ったら、わたしの宝物はローだわ。
彼を超える宝物なんて、この先手にすることなんてない。
だとしたら、占いは外れていたのかな。