第17章 巨大樹
ボボボ…
樹の根が張り巡らされた暗い地下を、エースの炎が照らす。
奥に進むにつれ、ネチャネチャとした樹液が分泌され、足取りを重くした。
(こりゃァ、モモを置いてきて正解だったな。)
ガスマスクをしていても香ってきそうな毒素の匂い。
毒素の発生源はここで間違いなさそうだ。
樹液は引火しやすい。
エースは火が燃え移らないように注意しながら、奥へと進んだ。
どうやら、この地下通路はそこまで深くはないようだ。
ほどなくして最下層にたどり着いた。
最下層は迷路のように、いくつも別れ道がある。
(さて、と。どうしたもんか…。)
こんなとき、答えを導き出してくれるモモはいない。
信じてくれた彼女のためにも、自分が仲間たちを救出しなくては。
(仕方ねぇ、しらみつぶしに行くか。)
日暮れまでには決着をつけたい。
入口に残してきたモモを想い、エースは前に進んだ。
「エース、遅いね。」
「きゅい…。」
あれからしばらく経ったけど、エースが戻ってくる気配はない。
エースに任せておけば大丈夫だろうという気持ちと、1秒でも早くローのところへ行きたいという気持ちがせめぎ合う。
(わたしに、もっと力があればなぁ…。)
そうしたら、今すぐローの下へ駆けつけられるのに。
『優しい子でいて。』
ふと母の言葉が脳裏をよぎった。
(あ…、昨日の夢だ。)
昨夜見た、懐かしい母の夢を思い出した。
あの頃の自分は、普通の人と違うということがよく理解できなくて、母を困らせていた。
(どうしてあんな昔の夢を見たのかしら。)