第14章 食虫植物
「そうと決まれば、あなたに名前を付けてあげないとね。」
きゅきゅ? とつぶらな目は首を傾げてみせる。
全身が鮮やかな緑色。
モモの薬指に輝く宝石がエメラルドだから…。
「決めた。あなたの名前はヒスイよ。」
「きゅい!」
ヒスイはその名を気に入ったようで、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。
その勢いのまま、モモの肩に飛び乗る。
「今日からよろしくね、ヒスイ。」
「きゅう。」
甘えたようにモモへと擦り寄った。
ヒスイからしてみれば、種から育ててくれたモモは母親そのもの。
どうしてこんな不思議な生物が生まれたのかは謎のままだが、こうしてモモには可愛い相棒ができたのだ。
「まぁ、ネズミ捕りの猫でも飼ってると思えば、問題ねェだろ。」
「そ、そうッスね…。」
宇宙人と戯れる少女にしか見えないけど、モモが喜んでいるならそれでいいような気がしてきた。
それに、さっきヒスイは触角を自在に操り、モモを助けてみせた。
育てようによっては、モモの護衛として役立つだろう。
(これで船長の過保護が、少し和らげばいいんだけど…。)
「あ? ペンギン、なにか言ったか。」
「いやいや、なにも言ってないッス。」
彼の過保護は、モモへの愛情と執着心がさせるもの。
たぶん、無理だろうなぁ…。
まあ、それだけ平和だってことだ。
ハートの海賊団に訪れた小さな事件は、小さな仲間が増えたことにより、無事に解決した。
今日も1日、穏やかな日になりそうだ。