第3章 ハートの海賊団
女の身体には無数の傷と痣があった。
肩と腿の辺りの傷は数針縫う必要があったものの、大事には至らなかった。
何度もぶつけたのか衣服は破れ、血に塗れでいたため、常備してある診察着にベポが着替えさせた。
命に別状ないが、彼女は1日経っても目を覚まさなかった。
彼女を見つけた責任感と従来の優しさから、ベポは仕事のとき以外の時間、常に医務室で付き添っていた。
普段は研究に没頭し、自室から滅多に出ないローも、合間を見て診察に訪れていた。
(一度診た患者をそのままに出来ねェからな。)
決して気になっているわけではない、と誰に聞かれているわけでもないのに言い訳をする。
ローが医務室に入ると、ベポの他にシャチとペンギンもいた。
「…お前ら、何してる。」
「あ、いや~…心配だから、お見舞いに…。」
「そうそう、お見舞いっス!」
嘘ではなさそうだが、半分は下心だろう。
ベッドで眠る彼女はずいぶん綺麗な顔をしているから。
ため息をひとつ吐くと、ベッド付近の椅子に腰掛け、傷の具合を診た。
我ながら綺麗な縫い口はキチンとくっつき始め、化膿の心配もなさそうだ。
「いやー、可愛いっスね!」
「うんうん、早く起きて欲しいな~!」
シャチとペンギンがローの後ろでキャッキャッはしゃぎ始める。
「お前ら、いい加減にしろ。」
彼女の腕をとり、脈を測る。
…問題はなさそうだ。じきに目を覚ますだろう。
「あなたは命の恩人です!ってチューされちゃったらどーしよう!」
「バッカ、お前なんかにするわけねーだろ!きっと俺だよ、俺。」
久しぶりの女子との接触に、2人は興奮が隠せないらしい。
「も~ッ!2人ともいい加減にしてよ!」
ついにベポがキレた。
キスの真似事をする2人をど突いた。
ドン!
ど突かれた2人がバランスを崩してローの背中を思いっ切り押してしまった。
顔色を診ていたローは押された勢いで彼女に覆い被さってしまう。
「「……あ。」」
ローと彼女の唇が重なった。