第52章 ハート
腰骨を掴まれ、何度も繰り返し打ちつけられるたび、喉を引き攣らせて喘いだ。
擦られる箇所が、抉られる箇所が、気を抜けば絶頂してしまいそうな快楽を与え、もしかしたらローにはモモの感覚すらも支配できる能力があるのではという疑問すらも抱かせる。
ローと心を通わせてからの時間は長くなく、身体を重ねた回数も決して多いとは言えない。
もちろんそれは6年前の時間を含めなければの話だが、身体は覚えているのだろうか、時折肌を撫でる指も、中を行き来する動きも、なにもかもがあの頃と同じままで。
「う、んんッ、はぁ……、あぁッ」
もし、あの頃のローが今の自分を見たら、なんて言うのだろう。
セイレーンというしがらみから逃げるだけの自分と決別したことを、褒めてくれるだろうか。
未来にどんな困難が待っていたとしても、共に立ち向かう決意をした自分を見て、「やるじゃねェか」と撫でてくれるだろうか。
自己満足でもいい。
都合の良い妄想でもいい。
勝手な夢を勝手に見て、自分を許そうと決めたから。
「おい、なにを考えている……。」
ほんの少し逸れた意識を敏感に察知したローの顔が、不服そうに顰まる。
間違いなくローのことを考えていたけれど、集中が途切れていた自覚はあったから、つい視線を泳がせてしまった。
「まだまだ余裕ということか。いい心掛けだな。」
「ち、ちが……ッ」
「なら、少しはまともな嘘くらいついてみろ。お前は顔に出すぎる。」
ならば本気の言い訳とやらを披露してやろうとしたところで、ローの腰が大きく動いた。
深く深く突き刺さった切っ先がモモの最奥にめり込み、まともな思考が吹っ飛んだ。
「あ、あぁ……ッ」
「チ……ッ、夢中なのは俺だけか?」
そんわけがない。
溢れる蜜がそれを証明するように、結合部から滴ってぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てている。
ローの片腕が背中に回り、ぐんと持ち上げられて胸と胸がくっついた。
向かい合って座るような体勢になり、自らの重みで太い楔をずぶずぶ奥に飲み込んでしまう。
「んぁ……、うぅ……ッ」
両腕に囲われてすっぽりと抱かれたモモの瞳から生理的な涙が流れ、濡れた眦をローが舐める。
「ああ、いいな。泣き顔がそそる。」
くつりと喉の奥で笑った瞬間、咥え込んだ熱源が太さを増した。