第52章 ハート
「貴様らが、ハートの海賊団か。」
最初に口火を切ったのは、男の方だった。
だが、まるで自分たちを探していたかのような言い方に、違和感を覚える。
なぜこの男は、自分たちをハートの海賊団だと知っているのか。
なぜこの男は、自分たちの居場所がわかったのか。
いくつもの疑問を浮かべているうちに、男は核心を突いた質問を投げ掛けてくる。
「セイレーンは、どこだ?」
「……ッ!」
セイレーン。
それは、政府関係者がつけたモモの別称。
この男は、モモのことを探している。
「なぜ、俺たちがハートの海賊団だと知っている。」
今さら惚けても、どうにもならない。
半ば認めるような口ぶりで尋ねると、男が驚愕の事実を口にする。
「なぜもなにも、トラファルガー・ローがいたからな。その配下はあの男の率いる海賊団に決まっているだろう。」
「な……ッ」
ローは今、海軍基地に潜入し、モモのビブルカードを取り返しているはずだ。
海軍基地ゆえに、慎重な隠密行動。
それなのに、どうしてこの男はローの存在を知っていて、なおかつこの場に現れたのか。
ローの存在を知っている海兵は、ローと戦った海兵しかいないはず。
だとしたら、この男が無事でいる理由はなんだ。
だって、ローは絶対に海兵なんかに負けないから。
「貴様らの船長なら、今頃我らが元帥に倒されているはずだ。」
「げ、元帥だって……!?」
新世界で海賊を名乗る者において、海軍元帥の名前を知らぬ者はいない。
ましてや、ハートの海賊団にとって、海軍元帥…サカズキは因縁の相手である。
この島にサカズキがいること自体、想定外。
では、おそらくこの男こそが今回の標的である副官であろう。
「じゃあ、キャプテンが電伝虫にでないわけは……。」
副官の発言により、ローに迫った危機を知った。