第13章 証
翌日、モモはローに連れられて、島の中央に位置した山岳に入った。
動きやすい服装がいいだろうと、Tシャツにカーゴパンツ、靴はスニーカー。
髪も邪魔にならないように、ポニーテールにした。
格好だけは、気合い満々で来たのだが、それに体がついて行くかといえば、そうではない。
「…あッ」
木の根に躓き、バランスを崩す。
転ぶ…! と思ったところで、隣から伸びてきた腕が素早く腰に回った。
「危ねェな…。」
「ご、ごめんなさい。」
もうこのやりとりも何度めのことか。
「オイ、いい加減に諦めて運ばれろよ。」
そう言うとローはモモの身体を抱き上げようとする。
「や…ッ、ま、待って…。もう少し頑張れるから。」
ローの腕から必死に逃げる。
自分がついて行くと言ったのだ。
こんな序盤から手間をかけさせたくない。
「チッ…、強情だな。」
ローとしては、モモを抱えるくらいなんでもないし、むしろそちらの方がスピード的にも、モモの安全面でも助かるのだが。
さっきから、ケガでもしやしないかヒヤヒヤする。
「大丈夫よ。わたしだって、船に乗ってからずいぶん丈夫になったんだから。」
そう、村にいたころよりもずいぶん足腰が強くなった。
といっても、元が元だけに、たいしたレベルじゃないのは変わらないが。
「そうかよ。だが、お前の足に合わせてたら日が暮れちまうな。」
グイッとモモを引き寄せる。
“ROOM”
「え?」
ブゥンと音を立てて、広範囲にサークルが張られる。
“タクト”
ヒュイっとローが指を回した瞬間、周りの風景が一変した。
「あ、あれ…?」
モモにしてみれば、瞬きをするほどの一瞬だった。
気がつけば崖の上におり、先ほどよりずいぶんと標高が上がっている。
「行くぞ。」
地理を知り尽くしたかのように、ローはモモの手を引いた。
「ローの能力って、便利ね。」
医術はもちろんだが、こんなふうに瞬間移動まで出来るなんて、悪魔の実の力って本当にすごい。
「そのぶん体力を使うがな。まあ、お前にケガさせるよりはずっとマシだ。」
「…ロー。」
どうやら意地を張りすぎて心配を掛けてしまっていたようだ。
大切なのは意地なんかじゃなくて、気持ちなのに。