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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第51章 選んだ果てに




海底から浮上するには、一定の時間が掛かる。
急速に上昇すると、気圧の変化で身体を壊してしまうため、こればかりはしかたがない。

しかし、仲間たちの安否が心配なモモにとっては、恐ろしく長い時間だった。

「……人は、いないわね。」

ようやく海面に顔を出し、窓から人影を探る。

幸運なことに、海兵の姿は見当たらない。

「よし。じゃあ、船を岸につけるよ。」

コハクがハンドルを回し、上手に船を操作する。
今や立派な海賊になった息子は、本当に頼もしい。

「これで準備はできたけど…、本当に行くんだね?」

「ええ、もちろん。」

これが本当に最後の確認だ。
陸に足をつけてしまったら、二度と引き返せない。

「外は寒いから、覚悟しなよ。」

「大丈夫、ローの上着を勝手に借りたから!」

コハクが茶化すように言うので、モモも笑顔を見せる。
笑えるうちは、笑っておいた方がいい。


実際外に出てみると、笑顔も凍るくらい寒かった。

「さ、さ、寒い……ッ」

こんな厳しい土地で働かなければならない海兵に、ちょっとばかり同情する。

「足もと、気をつけてよ。海に落ちたら、冗談じゃなく死ぬからな。」

そう言うコハクの身体は、少しも震えていない。
やはりこの子も、バケモノの血を引いているんだ。

先に陸に飛び移ったコハクに倣い、モモも船からジャンプしようとする。

しかし、その時だった。

ドォン……!

空気が震えるほどの爆発音が響き、大地が揺れた。
大地が揺れるということは、当然海も船も揺れる。

重心を移動しようとしていたところに、突然の揺れ。

運動神経の鈍いモモが転倒するには、十分すぎる理由だ。

「ひぇぁぁ……ッ!」

目の前には、凍てつく海。
仲間を救うなどと大口を叩いておいて、まさに今、死に直面している。

「か、母さん……!」

さすがのコハクも真っ青になり、最悪の未来を想像した時、彼の懐から緑色の生物が飛び出した。

「きゅい……ッ」

伸縮自在な触覚を伸ばし、モモの身体に巻きつける。
海に転落する前に、なんとか危機を救った。

「し、死ぬかと思った。」

「それはオレのセリフだよ……。」

前途多難である。



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