第49章 休息
意地悪なローの視線が疎ましくて、右腕で視界を遮る。
すると、のしかかっていたローの身体が動く気配がした。
「……?」
訝しんで腕をどけると同時に、ぞくぞくとした感覚が腹を伝う。
「……ッ、な…にを……!」
驚いて身体を少し起こせば、ローが臍のあたりに舌を這わせていた。
鳩尾から臍にかけて、舌先を滑らせ、臍の窪みをぬるりと舐める。
「や……ッ!」
そんなところ、舐める場所じゃない!
顔が燃えるように熱くなり、両手でローの頭をどけようと掴みかかる。
「邪魔だ、おとなしくしていろ。」
まるで子猫のじゃれつきを阻止するように、片手でそれを遮られてしまう。
その間にも、ローは窪みを執拗に舐め、ぴちゃぴちゃと音を響かせる。
「や…ッ、やだ…ぁ!」
堪らなく恥ずかしいし、やめてほしいと願っているのに、ローが舌を這わせるたび、下腹部がずくりと疼く。
(いやだ、こんなところ…気持ちいいはずがないのに…!)
胸や口内とは違う。
性感帯ですらない場所を愛撫され、それに感じる自分はどうかしている。
これじゃまるで、どこもかしこも感じる淫乱な人間ではないか。
「や…、やだ…ロー…ッ」
そんな自分が恐ろしくなり、必死に懇願すると、ローがようやく顔を上げた。
「……どうした?」
覗き込むように身体を動かした瞬間、ローの膝が偶然を装って、濡れた下腹部を擦る。
「あ…ッ、あぁ…ッ」
たったそれだけのことで、ビリリと身体に電流が走り、がくがくと震えた。
泣きたくもないのに、眦から涙が零れ落ちる。
「ああ、悪い。こっちが寂しかったのか。」
親指の腹で涙の痕を拭い、なんでもないように、すっかり凝った胸の頂を舐めた。
「あ…ッ、ふぅ…んッ」
そこじゃない、そこじゃ…ッ。
モモの考えていることなど、ローはなにもかもお見通しだろう。
しかし、彼はなにも気づかないように再び胸を弄りはじめた。
時折 温かな手がわき腹を撫で、もどかしさに苦しむ。
「う…、あぁ…ッ」
気づけば、嬌声を抑えることなど、頭から吹っ飛んでしまっていた。