第49章 休息
聞きたいと言うから語ったけど、どうなんだろう。
やっぱりこんな話、知りたくなかったんじゃないのか。
ちらりと見上げれば、こちらを見つめていたローと目が合う。
あいかわらず、整った顔立ちだ。
その上、強くて技量もあるなんて、ハイスペックすぎて自分に釣り合わない。
無遠慮に眺めていると、ローが静かに問いかけてきた。
「……そんなに好きな男がいたのに、他のヤツを愛せるもんなのか?」
「え……?」
ほんの僅かだけど、ローの瞳が揺れた。
その瞬間、モモは気づく。
どうしてローが過去の話を…昔の恋人の話を聞きたがるのか、その理由を。
だってモモは、散々言ってきたから。
その人以外、愛せない。
その人が、自分の中で永遠に1番なのだと。
その言葉に嘘はない。
モモの中では、過去の恋人も今の恋人も、同じローだから。
でも、そんなことはモモの秘密なわけで、当然ローにはわからない。
どうしてモモが、その人よりローを愛したのか。
その人が再び現れた時、どうしてローを選べるのか。
(自信、ないんだ。)
あの自信家で強気なローが。
(不安、なんだ。)
強引で冷静なローが。
ゆっくり瞬くと、肩に置かれた手に、少しだけ力がこもった。
それはなにかに、怯えるようで。
だからモモは、ローの膝にそっと触れて囁く。
「……愛せないよ、他の人なんて。」
あなた以外、ぜったいに。
「誰かの隣に立つなんて、二度とできないって思ってた。恋のしかたなんて、忘れていくものだと思ってた。」
胸のときめきも、痛みも、二度と経験しないものだと諦めた。
「でも…、好きになっちゃったんだもの。自分の罪を許せるくらい、ローを好きになっちゃったから…!」
伝わらない、伝えられない。
そう簡単には。
温め続けた想いは、拗れて拗れて、簡単に吐き出せそうにもない。
ごめんね、うまく伝えられなくて。
ごめんね、不安にさせて。
でも、これから長い時間をかけて、伝えていくから。
ねえ、だから……。
「責任、とってね?」
今度は、最後まで。