第12章 デート
翌朝、モモは仲間と共に港にいた。
アイフリードたちはローたちによって財宝を奪われ、船の海賊旗を燃やされた後、海へと解放された。
命まで奪うことはしない。
海賊の敗北はこれで十分なのだ。
しかし、別れ際に釘を刺すのは忘れない。
「今回は解放してやる。だが、次にモモを狙ってみろ、心臓とは言わず、全ての臓器を抜き取ってやるからな。」
アイフリードとて、たくさんの仲間の命を抱える一船の船長。退き際くらいわきまえている。
「ああ。もうセイレーンには懲り懲りだよ。」
彼女のおかげで多くの仲間を失った。
海より愛を選んだ仲間たちを。
そしてメルディアを。
瞳を見ればわかる。彼女はもう自分の下へと戻らないだろう。
けど、それでいいと思う。
「だが、小僧。俺がいなくなったからといってセイレーンがホワイトリストのS級だってのは変わらねぇ。永遠に狙われ続けるぞ。」
海軍はもちろん、存在が広まれば、数多の海賊たちに。
「お前は、それでもセイレーンを傍に置くのか。」
アイフリードの問いに対してローは悠然と言った。
「愚問だな。狙われる? 上等じゃねェか、俺からコイツを奪えるっていう命知らずなクズ共はかかって来ればいい。返り討ちにしてやるよ。」
凶悪な顔で笑むローに、アイフリードはポッカリ空いた胸の空洞を抑えた。
「そうかい…、余計な世話だったな。」
確かにこのルーキーならば、彼女を守り通せる、そんな気がした。
「じゃあな、小僧。海賊旗の礼は必ずしてやるから、覚えておけよ!」
アイフリードが最後に言い放ったセリフには、海賊としての矜持を感じられた。
ローはそれにフンっと鼻を鳴らすことで返した。