第49章 休息
店先でちょっとした騒動を起こしてしまったため、薬屋の店主から迷惑そうな顔をされてしまった。
「すみません。それ、買います。」
現金なもので、モモが商品を買うとわかったとたん、迷惑そうな表情は引っ込み、人の良さそうな笑顔に変わる。
さすがは商人。
「お客さん、お目が高い! こちらの商品は、あの医療先進国、サクラ王国の魔女が作った惚れ薬でして、効果は補償します!」
Dr.くれはがなにを思ってそんなものを作ったのかは知らないが、本当に意中の相手を惚れさせられるらしい。
ちょっと、怖い。
「おいくらですか?」
「今ならたったの、100万ベリーです!」
………高。
桁をひとつ小さくしても、予算オーバーだ。
「安くなったり…しません?」
人生初の値切りにチャレンジするが、店主は大仰に驚いた。
「お客さん、もしかして高いと思っていらっしゃる?」
もしかしてもなにも、めちゃくちゃ高い。
「ハートを掴む薬ですよ? それがたったの100万円で手に入るなんて、こんなにお得な話はないですよ!」
「……む。」
「今ここで買わなかったら、すぐに他の人が買ってしまいますよ! いいんですか!?」
「……むぅ。」
すっかり店主の手玉にとられ、買わなくてはという使命感に襲われる。
いや、実際欲しいんだけれども。
「でも…、ちょっと予算が……。」
モモが困った顔をすると、店主はすかさず次の手を打ってくる。
「そんなお客さんには、ローン払いをオススメしてます!」
「ろーん?」
「分割払いってことです。毎月、少ない額で済むんですよ。」
そんな払い方があったなんて。
それなら、高額な商品も買うことができる。
「まあ、利子といいますか、分割手数料が掛かってしまいますけど、…でも、たいした額じゃないですよ。」
「はい、それにします!」
「「……ハァ。」」
モモの隣で、ローとコハクのため息が重なった。
まるで、悪徳商法に引っかかるカモを見ているようだ。
もう少し、確認するとか疑うとか…、いや、期待するのはやめよう。
「じゃあ、契約書にサインを…──」
「支払いは現金だ。」
羽ペンを受け取ろうとするモモの手を取り、ローは札束ひとつを店主に投げて寄越した。