第10章 覚醒
ケンカしても、仲直りできる。
それが友達って、思うから。
わたしたち、友達でしょう?
じわりとメルディアの瞳から、涙が溢れた。
「…モモ、…ありがとう。」
こんな私を、友達と呼んでくれて。
「約束するわ、必ず…、あなたに絵画を見せるって。」
あなたの信頼に、応えてみせる。
この気持ちを宝物と言ってくれた、あなたに--。
モモの手から、鼓動を打ち続ける温かな心臓を受け取った。
メルディアの瞳はいつの間にか、あの濁ったものから、情熱という灯をともした熱い瞳に変わっていた。
「本当に良かったのか?」
メルディアの下から戻って来たモモに、一部始終を見ていたローが尋ねた。
「うん、あれでメルが夢を取り戻してくれるなら。」
それに本当は、あの日、両親を死なせてしまったのは、他の誰でもない自分のせいだと思うから。
でもそれも、メルディアを許すことによって、自分自身を許せたような気がするのだ。
そう思ったら、世界がずいぶん違って見えた。
きっと、隣にあなたがいてくれるからだと思う。
「せっかくくれたのに、ごめんなさい。」
「いや…、お前がそうしたいなら、それが一番いいんじゃねェか。」
そう言ってローはモモの頭を優しく撫でてくれた。
「それにしても、不思議ッスねぇ。モモの歌で俺たちの傷は治るのに、アイツらの傷は治らないんだ。」
「え…?」
ペンギンの指摘に今さらながら気づいた。
そういえば、アイフリードたちにも癒やしの歌が聞こえたはずなのに、彼らの傷は癒えていない。
(仲間のために唄ったから…?)
以前は歌の対象者を選ぶことは出来きず、影響は聞き手すべてに及んでいた。
それが今は、モモが想う人だけを選べるようだ。
セイレーンの能力に覚醒したのだ。
「お母さんが、教えてくれたのかもしれないわ。」
歌の楽しさを思い出させてくれたのは、母の言葉だったから。
「すげぇじゃん、モモ。これからは、もっと聞かせてくれよな!」
「ちょっと、ボク、まだ一回も聞けてないんだけど!」
ひとり蚊帳の外のような気がして、ベポが拗ねる。
「ごめんね、次はベポが気持ちよくお昼寝できる歌を唄うから。」
「約束だからね!」