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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第10章 覚醒




「船長、どうすれば!?」

崖の上では、顔色を真っ青にしてモモがこちらを見つめている。

手を出せば、彼女の命はない。


「クソッ! 手を…出すな…ッ」

その命令は、自分と部下2人を危険にさせてしまうもの。

けどそれでも、モモを失うわけにはいかないのだ。

(守ってやると、約束にしたんだ…ッ)

だから、すぐに助けてやる。
待っていろ。

そう思いながら、モモを見つめた。


「立派、立派…! たかが女ひとりに、ずいぶんと男気があるじゃないか、小僧。」

パンパンと、手を叩きながらアイフリードが寄ってくる。

「その男気に…惚れちまいそうだ、ぜ!」


ドカッ


ローの腹を思いっ切り蹴飛ばした。

「…ぐッ」

まともに鳩尾に入り、ガクリと膝をつく。

「「船長!」」

思わず駆け寄りそうになるシャチとペンギンに、ローは手を開いて制止した。

「来るな!」

アイフリードは手始めにローだけを痛めつけるつもりなのだ。

「そうそう。お前たちはおとなしく見てろよ。自分たちの船長が死んでいく様を…な!」

バキッ

今度は顎に蹴りを入れる。
勢いで後ろに倒れ込むローの腹を、さらに踏みつけた。

「ぐぁ…!」

ローの口から、赤い血が吐き出された。

「「船長!」」

アイフリードは構わずローを、蹴り、踏みつけ続けた。



「ロー!」

崖の上からその様子を見て、モモは涙を零した。

自分のせいで、ローが傷ついていく。

「メル、お願い、止めさせて…!」

ローが、死んでしまう。

「できないわ。言ったでしょう、私は彼の望みを叶えるのが全てだって。」

そのためには、なにを失っても構わない。

「…どうして? お母さんの絵を取り戻して、夢を叶えるんじゃなかったの!?」

メルディアはあの夜、そう語ってくれたじゃないか。

「……。」


そう、初めは確かに、そういうつもりでアイフリードに近づいたのだ。

絵画を所有する彼から、奪い返すために。


それがいつからだろう。

絵画を取り戻したら、彼と一緒にいられなくなる、と感じ始めたのは。

一緒にいられないのなら、夢など捨てると思ってしまったのは。



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