第44章 剣と秘薬
「母さんは昔、自分がセイレーンだから島を出られないって言ったけど、それは嘘だ。」
コハクはエースがモモを外に連れ出そうとしていたことを知っていた。
けれど、モモは最後まで、その手を取ろうとしなかった。
「…そうね。それだけが理由じゃないわ。」
本当は冒険に出る資格なんかないから。
でも、それを言うとコハクが気にするだろうと思ってセイレーンのせいにした。
「わかってるよ、母さん。母さんは、オレや父さんにひどいことをしたと思ってるから、それを償うために閉じこもったんだろ。」
「……!」
隠していたはずなのに、簡単に見透かされていた。
コハクは賢い子だから、モモの様子から察していたのだろう。
こうなってしまえば、認めるほかない。
「……そのとおりよ。」
過去にあんなことをしておいて、どうして再び冒険に出られようか。
結果的にまたローたちと海賊をすることになったが、すべてを忘れたローとまた愛を育むことなど、それこそできるわけがない。
どんなにローに望まれても。
「言いたかったことって、そのことなの?」
コハクは理由をセイレーンのせいにしたモモを怒っているのだろうか。
「いいや、オレが言いたかったことは、…そのことじゃない。」
「じゃあ、なにを…?」
嘘を吐くのはやめようとコハクは言ったが、モモはもう嘘は吐いていない。
「母さん、本当はわかってるはずだ…。」
モモは、わかっていて気づかないフリをしている。
「なんのことなの…?」
「母さんが島から出なかった理由は、ローを好きと認めないのは、罪を償うためじゃないってことをだよ…!」
それこそ、モモの最大の嘘。
「な…ッ」
言われたモモは、意味がわからず狼狽した。
どういうことなの。
わたしは…嘘なんか…吐いていないわ。