第44章 剣と秘薬
ローの指示通り服を脱いだモモは、彼の治療を受けて体内の薬を抜いてもらった。
(うう…、まさか身体の中まで見られるなんて…。)
“オペ”なんて言葉じゃ言い表せないくらい、衝撃的な治療だった。
しばらく立ち直れない気がする。
「さて、アイツらのところに戻るか。…ん、どうした、具合でも悪いのか?」
一方、なにも気にした様子のないローは、そんなモモの乙女心など気づくこともなく、あらぬ心配をしてくる。
「……なんでもないわ。行きましょう。」
体内を見られて恥ずかしい…だなんて、たぶんわからないんだろうなぁ。
宿に戻ると、まだ朝日が昇って間もないというのに、数人の仲間たちが起きていた。
その中には当然コハクもいて、2人の姿を認めるとすぐさま駆け寄ってくる。
「母さん…! 具合はどうだ? やっぱり朝になっても戻らなかったんだな。」
「ええ。でも大丈夫よ。ローが薬を抜いてくれたの。」
「薬を抜く…?」
ローの能力をそこまで詳しく知らないコハクに、ことの成り行きを説明した。
「はァ…!? なんだよ、そんなことができるなら最初っからやっておけよな!」
噛みつく勢いでローに怒るコハクを宥めつつ、内心は「もっと言ってやれ」と思う。
「コイツにも言ったが、完全に薬が抜ける訳じゃねェんだよ。もとの姿に戻るまで、いくらか時間が掛かっちまう。」
それでも言っておいてほしいと思うのは、たぶんモモだけではないはずだ。
「それで? あの女は戻ってきたのか?」
「ああ、サクヤか…。まだ帰ってこないんだよ。」
昨日の夜から寝ずにサクヤを待っていたコハクだったが、彼女は出て行ったきり戻ってこなかった。
「そうか…。だがまァ、おそらく数日もしないうちに戻るとは思うがな。」
早ければ今日中、遅くても1週間ほどで薬が抜ける…というのがローの見立てだ。
「あら、良かったじゃない、事なきを得て。数日間だけなら、むしろその姿を楽しんじゃいなさいよ。」
事件が無事に解決する様子を見て、ナミが前向きに笑いかける。
「楽しむ…かぁ。」
言われてみれば、もう子供の姿に戻ることなどないのだから、もったいない気がしてきた。
(そういえば、わたし、子供の頃に思いっきり楽しんだことないわ。)