第44章 剣と秘薬
矢継ぎ早に“ケジメ”という言葉を重ねられ、ついにモモは頷いてしまった。
その様子に、ローは知らずとベッドについた拳をギュッと握りしめた。
言質をとった…!
目覚めた瞬間とんでもない状況で、さらには二日酔い。
モモは間違いなく冷静な状態ではない。
たった今、彼女はローの提案に頷いたが、それが本心でなければ、冷静な状態であればあり得ないことだというのもわかっている。
けれど、そんなことは関係ないのだ。
要は、モモが認めたことに意味がある。
なぜならば、モモは責任感が誰より強い女だから。
例え不本意なことであっても、一度自分が言ったことは、必ず守る人間なのだ。
それが周囲から頑固と言われる所以でもあるわけだが。
だから、ここでモモが認めてしまえば、この先、彼女を自分の女として扱える。
なんて卑怯な手だとは思う。
しかし、今のままではなにも変わらない。
モモの気持ちがなくとも、確かな変化が自分には必要だ。
昨日までの、好きになってもらえるまで黙って待つ自分とは違う。
卑怯でも、格好悪くても、彼女の隣にいると決めた。
そのためには、周りにどう思われても構わない。
「わかればいい。なら、今日からお前は俺の女だ。」
そう言いながら、ローはベッドから下りた。
前のはだけたパーカーから、彼の逞しい身体つきが覗き、モモは思わず目を逸らす。
クルーと違ってツナギを着ないローは、普段から肌の見える着こなしをする。
だから彼の裸くらい見慣れているはずなのに、なんだか今は直視できない。
そうこうしているうちに、ローはモモの傍らに膝をつき、顎を捉えて自分の方を向かせた。
そしてそのまま唇を寄せる。
「……! ちょ、ちょっと…ッ」
ぎょっとしたのはモモだ。
ローの肩に手をついて背筋を反らす。
しかし、しっかりと押さえられていてビクともしない。
「なんだ、なにか問題があんのか。お前は俺の女だろう。」
「そ、それは……。」
さっき認めたよな? と視線で咎められれば、モモに抗う術はない。
肩についた手の力を緩めれば、その隙をついてローの唇が重なった。
柔らかな感触とチクリと顎にヒゲが当たる痛み。
思わず、心が甘く震えた。