第43章 覚悟
その瞬間、それまで固まっていたはずの身体が、嘘みたいに動いた。
なにがいけない?
モモの言葉が、自分に宛てたものではなくとも、自分を誰かの代わりにしているとしても、それのなにがいけないのか。
両腕でモモの身体を抱き、口づけをさらに深める。
甘い甘い感触は、酒に強いはずのローですら酔わせてしまいそうになる。
いったい自分は、なにに対して遠慮していたのか。
欲しいものはどんな手を使っても手に入れる。
それがローという男であるはずなのに、いつしか自分を見失っていた。
まったく、俺らしくもねェ。
モモがローを誰かの代わりにしているのだとしても、それがどうした。
むしろ、喜ばしいこと。
モモはローを選んだ。
例え誰かの代わりだったとしても、代わりになる男は自分でなくては許せない。
その瞳に映るのは、自分でなくては許せない。
「……モモ。」
僅かに唇を離し 名を呼ぶと、うっとりとした金緑がこちらを見つめる。
今、彼女は、間違いなくローを見ている。
代わりだっていい。
そこに付け入る隙があるのなら、喜んで代わりになろう。
でも、その先は…。
もう容赦なんかしてやらない。
どんな理由にせよ、火蓋を切って落としたのはモモの方なんだから。
絹のような髪に指を絡ませモモの後頭部を捕らえると、今度はローの方から奪うような口づけをした。
「ん……。」
舌を差し込み口蓋を舐め上げると、くぐもった声が漏れた。
しかし、モモに嫌がる素振りはなく、僅かに力の入った拳がローのシャツを握りしめるだけ。
奪いたい、もっともっと。
彼女のすべてが欲しくて、体重をかけるようにして押し倒した。
舌を絡ませ、食らいつくすように口内を暴いていく。
「ん…、う…ん…。」
酸素が足りないのか、モモの身体から次第に力が抜けていくのがわかる。
柔らかな唇を離すのは惜しいが、このまま意識を失われては堪らない。
名残惜しさを感じながら唇を離すと、酸欠と興奮で頬を赤く上気させたモモの姿。
とろけた表情をする彼女は、ゾクリとするほど色っぽかった。