第42章 追憶のひと
あまりにもタイムリーすぎて一瞬夢かと思ったけど、テケテケと駆け寄ってくるチョッパーは紛れもなく本物だ。
「チョッパー…! あなた、どうしてここにいるの?」
6年前、医者を志していた彼は、あの冬島で立派な医者になったものと思っていた。
「おれ、海賊になったんだ。この船の船医として!」
「え!」
寝耳に水とはまさにこのこと。
まさか、あのチョッパーが麦わらの一味に加わっていたなんて!
「一応、懸賞金も掛かって…」
「え、なに?」
呟かれた言葉は小さすぎてモモの耳に届かない。
聞き返したけど、チョッパーは慌てて「なんでもない!」と首を振った。
シルフガーデンのような無人島には、たまにしか新聞がやってこない。
そのため、モモはチョッパーが海賊になったことも、掛けられた懸賞金の額も知らなかったのだ。
「それより! モモこそどうしてここにいるんだよ。」
「あ、えっと…。」
そういえば、昔チョッパーと出会った時には、自分が誰の船に乗っているのかを話さなかった。
それは今の状況からして、安堵できるものだ。
「あら、あんたたち知り合いなの?」
意外そうに尋ねたナミに、チョッパーは「そうなんだ!」と頷く。
その親しみがこもったやり取りに、以前の彼を思い出し軽く微笑んだ。
あの時のチョッパーは、人間をあまり信用していなかった。
そんな彼がなぜ医者を志したのかは知らないが、少しだけ心配だったのだ。
人は、時と共に変わるものである。
「コイツ、モモっていって、すごい薬剤師なんだ。」
「あ…。」
つい物思いにふけってしまい、自己紹介をしそびれた。
そして、次にされた紹介に目を剥くことになる。
「おれの友達なんだ!」
「…えッ!」
友達だったのか!
てっきり、そう名乗るのはおこがましいものと思っていたから。
しかし、その反応に今後はチョッパーが「えッ!」と声を上げた。
「と、友達じゃなかったのか!?」
愕然とした表情をするチョッパーに、モモは慌てて首を振る。
「ううん! 友達! わたしたち、友達よ!」
あからさまにわざとらしいが、そのへんは不審に思わなかったようで、「だよな、あー良かった」と胸をなで下ろしている。
素直なところは、昔とちっとも変わらない。