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ハコの中の猫 【黒執事R18】

第7章 extra


「今回は、随分とまた、時間が掛かったな。いや、お前が意図的に掛けたのか。」
 目の前の悪魔は、ゆっくりとこちらに向き直り、冷たい薄笑いを浮かべた。

「覗(のぞ)き趣味とは、感心しませんね。坊ちゃん?」
 セリフこそ僕をたしなめるようなそれだが、コイツは何とも思っていない。むしろ、僕の取った行動を面白がっているような節さえある。
「フン。主人が自分の下僕を監視して、何が悪い。それに、お前の邪魔立ては一切しなかっただろう。」
「悪いなどと、そんな滅相もない。ですが、坊ちゃんにそのような素敵なご趣味がおありだったとは、私も知りませんでしたから。人間とは、色々な側面を持つ生き物なのですね。私も勉強になります。」
「それは、僕に対する当て付けか?それに僕は、『元』人間だ。」
 相変わらず、コイツの言動は、一々癇に障る。

「ええ、知っていますよ、マイロード。」
 目の前に近づいてきたかと思えば、長身の悪魔は白々しく僕の前に跪(ひざまず)いてみせた。
「ならいい。」
「坊ちゃんは、私の行動に対して疑問がおありなのでしょう?だから、結婚式から今の今まで、私の行動を見続けてきた。違いますか?」
「……。」
 コイツはこうやって、僕の考えなんて、全部を見透かしてくるんだ。気分が悪い。
「そんな顔をなさらないでください。綺麗なお顔が台無しですよ。」
「五月蝿い、黙れ。」
 不愉快だ。不愉快極まりない。
「それで、坊ちゃんの疑問とは、何でしょう?」
「……お前の行動に関するものだ。」
「行動、ですか?」
「別に、ただ魂を喰らうだけなら、あんなに手間暇をかける必要なんて無いだろう。結婚式が終わってから、2人纏めて喰えば早かっただろう。」
 そう、渚とかいう女にやったように、手早く、手短に。別に、見つかるリスクのことを恐れてではない。もしも見つかるようなことがあっても、その時は目撃者をまとめて殺せばいい。そうではない。長く時間を掛けても、時間を掛けなくても、永遠にも等しい悪魔の時間の中では、その時間の差など無いに等しい。差が無いに等しいのであれば、わざわざ手間暇を掛ける必要性だって、乏しいはずだ。
「我々悪魔にとって、時間とは永遠に等しい。」
「だからこそ、無意味な手間は不要だろう。」
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