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ハコの中の猫 【黒執事R18】

第1章 第1話


「それでは、新郎、新婦の入場です。皆さま、拍手でお迎えください!」

 結婚式用の派手なBGMとともに、これでもかというぐらい着飾った主役が式会場に登場する。結婚式では実によくある光景だ。式会場にバランスよく配置された人間たちが、自らをサルのおもちゃのようにして手を叩き続ける光景は、はっきり言って滑稽だ。新郎新婦を祝う役目で設置されているはずの人間のうち、必ず何割かは、傍目に見てもそれほど祝うような表情をしていない。当たり前だ。結婚などといった、一般的に見て「おめでたい」ことをこんな人前でするのだ。当然、やっかむ人間もいれば、他人の幸福に興味の無い人間もいる。たとえ参列しているのが主役の友人だったとしても、そのように友人関係にあることと、他人の幸福に対して素直に喜べるかということは全くの別問題だ。むしろ、それなりに親しい人間が幸福を手にした時ほど、人間というものは負の感情が芽生えやすいものではないだろうかとさえ感じてしまうこともある。この場合関係無いが、たとえ自分にとって血縁関係にある人間が幸福を享受する場合であっても、時として悲惨なまでに醜い感情が湧き出でることすら決して珍しいことではない。
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