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ハコの中の猫 【黒執事R18】

第2章 第2話


「……そうよねぇ。まだ三十にもなってない若い女の子なのにねぇ。」
「結婚もまだの、可愛らしい女の子だっていうのに、勿体無い……」
「子どもの顔も見たかったわねぇ。親御さんもたまったもんじゃないでしょう。」
「それに、死に方が死に方でしょう?」
「ああ、聞いたわよ。確かホテル内で、シーツにくるまって見つかったらしいわよ。乱暴されたんじゃない?昔から、可愛い子だったし……」
「それが、部屋にも体にも、争ったような傷も跡も全く見当たらなかったって。」
「ええ!?」
「お金とかアクセサリーなんかも、そのままだったんだって。」
「えー!?じゃあ、自殺なの!?まさかそんな、あんな子に限って……!」
「警察が色んな線で調べても、結局よく分かんなかったらしいわよ~。」
「怖いわねぇ~。」

 ここまで聞いたところで、私は我慢できなくなってその場を離れた。渚の親戚らしいおばさんたちは、生々しい立ち話に夢中だ。私は別に渚とそこまで仲が良かったというわけでもないが、亡くなった人間に関する噂話を聞き続けるというのは、やはりあまり気持ちの良いものではない。そう、渚はあの結婚式の翌日から職場に来なくなり、その日の夕方に、式場になっていたホテルで、遺体となって見つかったらしい。私はあの日、結婚式が終わったときに渚から、寄るところがあるから先に帰っていいよと言われたきり。そして、今はお葬式への参列が終わったところだ。職場の他の人たちは、お通夜で済ませる方が多かったが、私と渚は同期のため、職場の上司から葬式に参列するように言われたのだ。言われなくても、参列させてもらうつもりだったけれど。それにしても、特に親しくしていたわけでもない相手とはいえ、年齢の近い職場の同期、それも女性が亡くなったとあっては、精神的に「来る」ものがある。葬式が終わり次第職場へ戻ろうかと考えていたが、こうして実際に葬儀に参列した後の私は、とてもじゃないがそんな気分になれない。一応職場に連絡を入れてみると、今日は帰って構わないと言われた。
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