第1章 君がいなくなる
「お風呂入る?」
「あ…うん。」
「わかった。」
きっと縛っているガムテープを全て剥がした時、成海は走って逃げるだろう。もうそれで良い。初めから自分達は出逢っていなかったと思えばいい。神様が魅せてくれた約二年の夢だと思おう。
「…今迄楽しかった。自分なんかと付き合ってくれてありがとう。凄く幸せだった。」
ボソッと呟いたこの言葉は、ガムテープを剥がす音によってかき消された。
全て剥がしきるのに十分もかからなかった。ゆっくり剥がしたつもりでも、やっぱりこんなもんなんだな。
さあ、逃げなよ。ばいばい成海。
もう諦めついてるよ。
でも、これだけは言いたかった。いかないで。