第1章 君がいなくなる
「ごめんね、成海。許してもらえなくて良いよ。でも成海の傍に居たいの。ずっと居たい」
「僕は、まっぴらだ」
「…ご飯食べる?」
「誰がお前なんかの」
「わかった。」
一人分の晩御飯。食べるのが自分だけなら、そう凝ったものなんか作らなくて良い。適当に野菜スープを一人分作り、食べた。
彼が帰らねばならなかった時間を三時間も過ぎた。彼の母親はどう思っているのだろう。息子が反抗期だ、私より彼女の方を選ぶのかなどと考えているのか。それとも、早く帰って来いと言う気持ちだけかな。
流石に強がっていた成海でもお腹は空いているだろう。こんなスープで良ければ食ってくれと成海の口元にスプーンで野菜をすくって持っていった。
「言わなかったか?お前なんかが作ったもんは食わない」
「…そう」
スープをゴミ箱に流した。普通の、部屋にあるようなゴミ箱。虫が寄るかもしれないが、もうどうでもいいや。いっそスープを入れていた皿とスプーンも捨ててしまおう。ゴミ箱に捨てた。
「いや、そこまでせんくっても…」
優しさの残る彼の言葉。いつもお前はそうだ。別れようとしても諦められない、中途半端な優しさをくれる。
そこがまた、大好きで、そして大嫌いなんだ。