第1章 君がいなくなる
「てかさ、世の中で美しいゆーて謳われとる物は五万とあるやん?」
「聞いちゃいねぇな」
「でもそれ全部が全部美しいと思えるか?」
「人の好みによりけりやろけど…」
「せやろ!でも死ぬ時は皆同じことを思う筈や、死にたくないって。それはやっぱ動物としての本能的なやつなんやろ」
「あぁ…それで?」
「美しいと思う」
「いやだからさ…」
「そして平凡な毎日も美しいと思う」
「いや今杏子がしていることは非凡やと思う」
「いや、成海と過ごした今迄振り返ってみよ。毎日沢山話して沢山笑ってしてたんが自分にとっての平凡になってた。毎日繰り返してたから、それこそが平凡になってた。でも…」
「?」
「成海がどっか行くんやったら平凡やなくなる。今迄成海がおるんが当たり前やったのに、ほんなん嫌や」
「ゆーて僕等出逢って二年も経ってないやん。これからの永い人生の中での二年って川漂う落ち葉と同じようなもんやで。」
「ほれくらいわかっとるわ。」
「んなら僕に執着すんなや。」