第8章 冬日
「美寿子、そろそろ起きたらどうだ?」
「んー…さえとー…」
「何だ?今なら1つだけお願いを叶えてやるよ。」
「じゃあねーぎゅーってして?」
美寿子の寝起きがどうなのかは分からないが、言ってしまったのだ。
実行せざるを得なかった。
美寿子の透明な肌をゆっくりと抱き上げ、ギュッと抱き締めた。
「はぁ~…」
「何だよ…」
「冴杜…ドキドキ言ってるね。」
「…あぁ、ホント慣れないんだよ。何時でも緊張してる。」
「私もね、冴杜と二人でいると、すっごくドキドキするんだよ?ましてや今なんてこんな状況で…もう爆発しちゃうよ。」
にっこりと笑った美寿子の顔を見て、少し俺も頬が緩んだ。
「さて、そろそろ服を着てもらえるかな?」
「…あ、」
そう言って美寿子はまたしばらく布団の中に潜りっぱなしになっていた。
.......
「冴杜、この後美寿子ちゃんを送るのよ?」
「あぁ、ちゃんと帰すから心配要らないよ。」
今日は飯を美寿子も含め4人で食べている。
なんだが変に感じていた。
「皐月さんは、どうして冴杜と付き合ってるんだい?」
「父さん、変な事聞くなよ。」
「変じゃないさ、お前のどこを好きになったのか聞きたいじゃないか。」
「えっと…初めて会ったのは高校に上がってすぐでした。
それから、2年生になったら直ぐに冴杜を好きになりました。
冴杜みたいな真っ直ぐな人、初めてだったんです…」
「あらあら、てっきり冴杜が押し切ったのかと思ったら両思いだったとは…」
「もう良いだろ?
美寿子、時間大丈夫か?」
「うん、でもそろそろ帰ろうかな。」
飯を食べ終えた俺達は少し休んでから家を出た。
「美寿子、行きたいとこ有るんだけど…いいか?」
「うん…」
寒さに手を暖めながら歩いて、近くの公園に着いた。
「ここ、どこ?」
「…思い出、前に由理と来たところなんだ。」
「由理さん…」
「美寿子とここに来て、ちゃんとけじめつけたかったんだ。」