第5章 夏草
リビングにあげると、母は黙りっぱなしだった。
「何で今更来たんだ。」
「…」
「答えたらどうだ。息子に言われっぱなしで良いのか?」
「今日は…謝りに来たの…ごめんね…一番大変な時にあなたを一人にさせてしまって…」
「…で?俺になんて言って欲しいんだよ。」
「…」
「またかよ、どーせ魂胆は俺に仕送りすんのが厳しくなったから、アパートを借りるお金が勿体無くなったから。
どうせそんなとこだろ?」
「違うの!」
「何が違うんだ!自分の社会的保身の為に、息子を置いて出ていったくせに!!」
そう叫ぶと家の中がシンとした。
「ここに戻って来たければ好きにすれば良いさ。元はと言えばあんたらの親の物だし。
だけど俺はあんた達を信用しないし、親とも思わない。
それだけだ。」
俺はそう言って、家を出ていった。
.......
「…とは言ったものの…これからどうするかな~」
困り果て、ケータイを見ると、美寿子から電話が来ていた。
かけ直すと美寿子はワンコールで出た。
「もしもし、電話出れないでわりぃ。」
『あ、冴杜くん。大丈夫だった?』
「俺は良いけど、お前は何か用あったんじゃないか?」
『えっと…大した用じゃないんだけど…今日暇かなー…なんて…』
「暇だよ。美寿子の家で大丈夫か?」
『えっ!?構わないけど…ホントに大丈夫なの?』
「あぁ丁度用事も済んだし、これから行っても良いよな?」
『う、うん!!もちろん!待ってるね。』
早速向かう先が出来た俺は少し足を早めた。