• テキストサイズ

あなたの好きをまだ知らない。

第5章 夏草


リビングにあげると、母は黙りっぱなしだった。

「何で今更来たんだ。」

「…」

「答えたらどうだ。息子に言われっぱなしで良いのか?」

「今日は…謝りに来たの…ごめんね…一番大変な時にあなたを一人にさせてしまって…」

「…で?俺になんて言って欲しいんだよ。」

「…」

「またかよ、どーせ魂胆は俺に仕送りすんのが厳しくなったから、アパートを借りるお金が勿体無くなったから。
どうせそんなとこだろ?」

「違うの!」

「何が違うんだ!自分の社会的保身の為に、息子を置いて出ていったくせに!!」

そう叫ぶと家の中がシンとした。

「ここに戻って来たければ好きにすれば良いさ。元はと言えばあんたらの親の物だし。
だけど俺はあんた達を信用しないし、親とも思わない。
それだけだ。」

俺はそう言って、家を出ていった。

.......

「…とは言ったものの…これからどうするかな~」

困り果て、ケータイを見ると、美寿子から電話が来ていた。
かけ直すと美寿子はワンコールで出た。

「もしもし、電話出れないでわりぃ。」

『あ、冴杜くん。大丈夫だった?』

「俺は良いけど、お前は何か用あったんじゃないか?」

『えっと…大した用じゃないんだけど…今日暇かなー…なんて…』

「暇だよ。美寿子の家で大丈夫か?」

『えっ!?構わないけど…ホントに大丈夫なの?』

「あぁ丁度用事も済んだし、これから行っても良いよな?」

『う、うん!!もちろん!待ってるね。』

早速向かう先が出来た俺は少し足を早めた。
/ 33ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp