第5章 麦わら帽子とヒマワリとカメラ
14
植えたヒマワリの多くが花開き、二つの畑が黄色に染まった頃。
男はまたもや上機嫌で大広間へと向かっていた。
肩には途中で出くわした小夜左文字を乗せ、脇には中くらいの箱を挟んでおり、ふんふんと鼻歌を奏でながら歩く様はまるでお気に入りのおもちゃを与えられた幼子のようである。
大広間につくと小夜左文字を肩から降ろし
脇に挟んでいた箱を机の上に置いた。
男はいつもの席に胡座をかいて座ると、膝をぽんぽんと叩いて小夜、と呼ぶ。
ぶんぶんと首を降っていいという小夜左文字を意にも介さず抱き寄せると、胡座の上にのせた。
ついでに付け加えるならば、鼻歌はまだまだ続行中である。
「主機嫌いいなぁ。何かあったのか?」
そんな男の鼻歌を聞いてきたらしい和泉守兼定が、冷蔵庫に入った冷えた麦茶を注ぎながら尋ねた。
男は箱を開けながら手招きする。
「まあな。兼定、お前もこっちにおいで。」
和泉守兼定は言われるがままに、お盆に麦茶の入ったボトルとコップを3つ乗せて男のすぐ横に座る。
がさごそと音を立てながら男が箱から取り出したものは、一眼レフカメラであった。