第4章 夏の風景
そうしてハイペースに飲んでいった結果、男が出来上がるのに一刻も要さなかった。
度数の強い日本酒をあれだけ煽れば当然のこと。
見事な酔っ払いの完成だ。
「おい、主。そろそろやめろ。」
これはやばい。
鶴丸国永は、明日山姥切国広と薬研藤四郎にどやされると、男からお猪口を取り上げた。
まさかこんなに飲むとは思わなかったのだ。
理性などどこ吹く風。
男は奪われたお猪口に気づくと、鶴丸国永をきっと睨みつけた。
「さけぇ、かえせええ…」
呂律すらちゃんと回っていない。
舌ったらずな喋り方に、こんなに酔った主を見るのはいつぶりだとげんなりする。
男は酔うと絡み酒に愚痴がはって、それはそれは面倒臭いのだ。
「だめだ、おい、ちょ、主!」
鶴丸国永が、男が届かぬようにとお猪口を高く上げれば、それを取り返そうと鶴丸国永に乗っかかってくる始末。
本当手に負えない。
体重のかけ方も酔っ払いに加減が出来るはずもなく、鶴丸国永は不安定な大勢のままどさりと後ろに倒れこんだ。
鶴丸国永は隠すこともなく、盛大にため息を吐く。
「さけ…」
それでもなお酒酒と繰り返すのだから、どうしようもない。
うーひっく。
男はひとつ、しゃっくりをこぼした。