第4章 夏の風景
少しして鶴丸国永が戻ってきた。
手にはお猪口と日本酒が握られている。
いつも思うが、鶴丸国永は驚くほど飲む。
ザルとかいうレベルじゃない。
最早肝臓が宇宙だ。ブラックホールだ。未知の領域だ。
酔わないわけではないのだろうが、泥酔やら理性を飛ばすやらといったところを見たことがないし、二日酔いになっているところも見たことがない。
三条派といい五条の刀といい、じじいはどうしてこうも酒に強いのか。
へし切長谷部や一期一振のように、いっそでろんでろんに酔ってくれれば既成事実でも作れるというのに。
お猪口に酒を注がれ、渡される。
男は受け取ると一気に煽った。
ピリリと喉が焼ける感じがたまらない。
中身のなくなったお猪口には、すぐに酒が注がれる。
男は酒を煽ってはサツマイモの甘露煮を口へ放り込んでいく。
鶴丸国永の言う通り、確かに大倶利伽羅の作るサツマイモの甘露煮はうまかった。