第4章 夏の風景
大広間に向かうと、意外にも台所に灯りが点いていた。
燭台切光忠だろうか、と男は灯りの元へと向かう。
しかしそこにいたのは意外や意外。
大倶利伽羅だった。
「倶利伽羅か、珍しいな」
男が声をかければ、大倶利伽羅は鍋から目を離すことなく答えた。
どうやらサツマイモの甘露煮を作っているらしく、鍋からは砂糖を煮詰める音が聞こえてくる。
「起きたのか」
「うん。夕餉食べてないから腹減ったんだ。俺も何か食いたい。」
「あんたの分の夕餉は光忠が別で避けてたぞ。冷蔵庫にある。」
「さすが光忠だな。」
男は冷蔵庫を開けると、丁寧にメモ付きのラップがしてあるハンバーグと付け合せのサラダを取り出した。
保温に設定してある炊飯器から米をつぎ、サラダを避けてハンバーグを電子レンジで温める。
2分ほどして電子レンジからハンバーグを取り出すと、今は誰もいない机にそれらを置き、床に腰を下ろした。
電気を最低限しか点けていない為か、何時もより何処か心許なく感じる。
手を合わせいただきます、と小さく呟いてハンバーグを口に放り込んでいく。
口に入れた途端広がる肉汁と、僅かに残っている玉ねぎの食感。
口当たりは柔らかく、しかし食べ応えを感じさせる。
燭台切光忠のご飯は本当にうまい。
大広間には男が箸を動かす音とコトコトと鍋の音が響く。