第4章 夏の風景
「この間第一部隊があたった、第三勢力か」
「ああ。話を聞けば聞くほど厄介な奴らでな。体力も生存値も高い上に、槍が多いときた。」
「…きみも大変だな。やっと慣れた頃にこんなもんが出てきちゃあ、落ち着くに落ち着けんだろうに。」
自分を気遣う鶴丸国永に、男はそんなことはないと首を降る。
「本当に大変なのは、お前たちだ。俺は戦えないし、傷も負わない。」
もちろん、審神者業を怠ってなどいないし、怠る気もない。
しかしどちらの負担が大きいかと問われれば、それは一目瞭然。
刀剣男士たちのほうである。
鶴丸国永は何も言わない。
言う必要がないと分かっているからだ。
男のこれは、悲観でも何でもない。
彼の中に鎮座している、動かしようのないものだ。
「それでも、主は人間だ。無茶をすれば体を壊す。今だって隈もできているし、顔色もあまりよくない。」
「ただの寝不足だよ。俺は二徹した位で倒れるほど柔じゃない。」
「それならいいんだ。たださっきから気になってたんだが…」
鶴丸国永から柔らかな笑みが消え、かわりに眉間に皺が刻まれる。
男はそれを、眠気で霞がかる思考でぼんやりと眺めた。
「主な驚くほど髭が似合わんな」