第4章 夏の風景
さて、三日月宗近がいなくなり、男にとっては非常に嬉しい状況となった。
なんと言ったって好きな人と二人きりなのだ。
嬉しくないはずがない。
普段ならば、だが。
男は今、堪らなくここから逃げ出したかった。
というのも、先程三日月宗近が男の舌を舐めたせいで、二人の間には何とも言えない気まずい雰囲気が流れているからだ。
男は手持ち無沙汰に、もうすっかり溶けて液体になったかき氷だったものを、スプーンでくるくるとかき混ぜる。
「きみ、ちゃんと寝てないだろう。」
沈黙に堪え兼ねたのだろうか、鶴丸国永が口をひらいた。
もしくは、この気まずい雰囲気を払拭しようとしたのかもしれない。
男はやや遅れて、返事をした。
「政府に提出する書類の作成を、出来るだけ早く作らなきゃならなかったんだ。」
男は手を止めて、遠心力で回って渦巻きができた液体を見つめる。
今朝方完成した書類は、すぐこんのすけに届けてもらった。
これで少しでも対策が練れれば、或いは他の審神者の役に立てばいい。
この状況で混乱するのは、審神者になったばかりの新人たちだ。
そんな者たちの負担を減らせればいいと思った。