第4章 夏の風景
それからほとんど無意識に鶴丸国永の方を見た。
鶴は白いからなあ。
焼けると赤くなりそうだ。
去年は夏の期間がそれ程長くなかったし、日焼け止めも塗らせていたが、日焼け止めは嫌がる刀が多かったことを思い出す。
「あるじ?」
無遠慮にぼーっと鶴丸国永を見つめていた男は、目の前の彼の呼びかけではっとする。
それから無意識に見つめていたことに今更気付いて、かんばせを紅く染めた。
「あ、いや、何でもない。」
ばっとあからさまに顔を背けた男を、三日月宗近がほくそ笑む。
まるでいいことを思いついたと言わんばかりに袖を口に当て、それから男を呼んだ。
「主、そういえば先ほど鶴に面白いことを聞いたのだ。」
「面白いこと?」
「ああ。かき氷を食べると、舌がシロップの色になると聞いた。」
「それか。確かになるなぁ。」
「初めて知った時は、俺も驚いたもんだ。」
「しかしな、鶴も俺も苺味ゆえ、それ程分からん。そこでだ、主。」
「おう、何だ?」
「おぬしはブルーハワイであろう。どれ、じいに舌を見せてはくれぬか。」
三日月宗近は興味津々と笑う。
男は大口でかき氷を一口食べて、口の中から無くなったのを確かめてから舌を出した。
ちろと出された舌は薄くて小さい。
確かに青に染まっており、三日月宗近は感嘆の声を上げた。