第4章 夏の風景
かき氷を手に、男は縁側へと向かった。
せっかくなので夏を堪能しようという魂胆だ。
中庭を見渡せる所までくると、そこに鶴丸国永と三日月宗近がふたり並んでいる姿を見つける。
その横に置いてある空になった器を見て、ここで食べていたのかと男は通り過ぎようとした。
通り過ぎようとしたのだが、そこで三日月宗近が男に声をかけた。
「主や」
「三日月」
三日月宗近が男の方を振り向けば、横にいた鶴丸国永も男の方を向いた。
「何だきみ、まだ食べてなかったのか?」
驚いた、とでも言うように鶴丸国永が言うのに、男はむっとして返す。
「さっき掃除が終わったばっかりなんだ。畳についた泥をとるのは大変なんだからな。」
「わるい主、許してくれ」
暗に鶴丸国永のせいだと男が言えば、鶴丸国永は小さく笑いながら許しを乞うた。
悪びれる様子のない鶴丸国永に、男はため息を吐く。
「いいけど、廊下掃除しろよ。」
「手厳しいなあ、主は。」
「今回は鶴が悪い。あまり主を困らせてやるな。」
「三日月、君だって今日主に我儘を言っていたじゃないか。」
「はっはっはっ、いやあ、主よ。かき氷とやらはうまかったぞ。また食べたい。」