第4章 夏の風景
「鶴、お前なんで泥だらけなんだ?!」
男は思わず叫んだ。
そう、鶴丸国永は泥だらけなのである。
何時も来ている袴も、鼻の頭にも頬にも、ありとあらゆる所に泥がついている。
その姿は宛ら泥遊びを終えたやんちゃ坊主のよう。
男の声に、台所にいた燭台切光忠が顔を出した。
「うわっ、鶴さん?!もー、部屋に上がるのはちゃんと泥払ってきてからって何時も言ってるでしょ!」
「そうだったか?」
「そうだよ!」
特に詫びる様子もない鶴丸国永に、燭台切光忠がため息を吐いた。
そのうち彼は胃痛で死ぬんじゃないだろうか。
燭台切光忠は、なかなかの苦労人だ。
男はそんな燭台切光忠の心中を察しつつ、呆れたように鶴丸国永を見遣る。
「鶴何してたんだよ…」
「ちょっとばかり仕込みをな」
「そんなことだろうと思った。ほら、光忠あんま困らせんな。かき氷は湯浴みしてきてからだ。」
男がそう言えば、鶴丸国永は素直に従う。