第4章 夏の風景
一通り質問に答えてやったものの、三日月宗近はいまいちピンときていないらしい。
眉を下げて困った顔をしている。
「よく分からんな。…主のお勧めは何だ?」
「俺が好きなのはブルーハワイだが、人気なのはやっぱイチゴだな。」
「なるほど、では俺は苺を頂くとするか。」
そう言って、三日月宗近がシロップをけずった氷にかける。
やっと三日月宗近が口を閉じたところで、男は部屋をぐるりと見回した。
大広間にいる刀剣たちを数えて、そういえば鶴丸国永がいないと気づく。
鶴丸国永がこの本丸で夏を迎えるのは二度目であり、初めてかき氷を食べた時から彼のお気に入りの食べ物に仲間入りを果たした物でもある。
一夏前にもかき氷は何度か作ってやったが、彼は毎回食べていたはずだ。
珍しいこともあるなあ、と男が思ったところで、スパーンッと襖が開けられた。
男が驚きに心臓をばくばくさせていると、そこにはやはりと言うか鶴丸国永の姿があった。
「主!かき氷を食べにきた!」
元気にそう言い放った鶴丸国永は、机にあるかき氷を見つけるや否やシロップを選び始めた。
お前やっぱかき氷好きだなぁ、ってそうじゃない。