第4章 夏の風景
男は目的地であった大広間につくと、台所からかき氷機を出し、こんのすけに頼んでいた氷とシロップを受け取った。
大広間には三日月宗近の他にも、太刀が数人と脇差が揃っている。
男はかき氷機に氷をセットすると、ハンドルを回し始める。
このかき氷機は手動のもののため、スイッチ一つで削ってくれるわけではないのだ。
大変だが、刀剣たちにやらすと喜ぶので当分このままでいいと男は思っている。
小夜左文字が一生懸命削っているのを見守りながら、男は欠伸を噛み殺し、今にも眠りそうなのを必死に耐える。
こちとら二徹目なのだ。
丁度よく抜ける風と、控え目に鳴る風鈴の音が余計に眠りを誘う。
行儀が悪いと分かりつつ、机に肘をつき頬杖を付きながら微睡む。
今にもかくんかくんと落ちてしまいそうな意識が、しかし次の瞬間には吹っ飛んだ。
「あーるーじー」
まるで語尾にハートでもついてそうな甘ったるい声で呼ばれ、それと共に本日二度めのタックルを喰らう。
「ぐえっ」
ぐきり、嫌な音と共に蛙が潰れたような不細工な声が出た。
お陰で目は覚めたが、腰の筋を痛めた気がする。