第4章 夏の風景
以上、と伝えるべきことを伝えて拡声器のスイッチを切る。
ふう、と一息ついていれば、短刀たちが男のもとへと走ってきた。
「あるじさまー!」
走ってくるなりどん、と男に体当たりを構したのは今剣だ。
練度の高い今剣の体当たりは、結構な威力である。
男はカエルの潰れたような声を出した後、自分の腰に抱きつく今剣の頭を撫でてやる。
「おう、今剣。かき氷たべるか?」
「たべます!」
瞳をきらきら輝かせ、興奮で頬を上気させ笑顔を浮かべる今剣はそりゃあもうかわいい。
男はそうかそうかと言って、更に頭をくしゃくしゃとかき混ぜる。
眠いのを我慢している甲斐があるなあ、と幸せの笑みを浮かべた。
今剣を皮切りに、本丸にいる短刀たち(一人は大太刀であるが)が次々に男のもとへと集う。
男の右手を引くのは乱藤四郎、左手をそっと繋ぐのは小夜左文字、肩には蛍丸が乗り、着流しをちょんと摘んで男にひっついているのは五虎退だ。
更に両隣を平野藤四郎と今剣があるいており、男は幸せに頬が緩みっぱなしになるのを感じる。
眠気も吹っ飛ぶというものだ。
その状態で歩いていれば、その姿を薬研藤四郎が発見し、彼もまた微笑ましげに男へと着いて行く。