第3章 閑話休題:山姥切国広
まだ刀が数口しかなかった頃は、よくこうして共に同じ部屋で寝ていた。
これは主も知らないことだが、薬研藤四郎は魘されることがよくある。
その度に薬研藤四郎は山姥切国広の部屋に来て、申し訳なさそうに笑うのだ。
『すまねぇ、一緒に寝てもいいか?』
初めて言われた時は、山姥切国広もまだ他人の眼に慣れていない頃であったから、冷たくあしらった。
あしらったが、それでも尚頼むと言われれば良心がちくりと傷んだ。
それを認めた時から、山姥切国広と薬研藤四郎はよく同じ部屋で寝ていた。
薬研藤四郎曰く、誰かがいる方がよく眠れるらしい。
一度主に相談してみればと提案したこともあった。
しかし彼は首を横に振ってそれを否定した。
それから申し訳なさそうに笑って、こう言ったのだ。
『心配かけたくねぇんだ』
そう言われてしまえば、山姥切国広は何も言えなくなってしまった。
主は心配性だ。
初めて重症で帰ってきたときなんて、手入れをしながらずっと泣いているもんだから、体中の水分がなくなってしまわないかと心配したものだ。
刀が増えてからは二人で同じ部屋で寝るということはなくなったが、そういえばそんなこともあったと山姥切国広は思いを馳せる。