第3章 閑話休題:山姥切国広
さっさと受付を済まし、予定表を受け取ってから主の元へ戻る。
薬研藤四郎と話している主は、一期一振を見て優しい笑みを浮かべていた。
遠目で見ても分かる穏やかな雰囲気に、山姥切国広は安心する。
しかしそれも、次の瞬間には崩れることとなった。
何を話しているのかは分からないが、恐らくからかっているのであろう。
鶴丸国永が一期一振にちょっかいを掛けるというのは、本丸でもよく見られる光景であった。
それを見守る主の瞳は、一瞬で温もりを失った。
山姥切国広は、その感情をよく知っている。
嫉妬だ。
嫉妬と、悲しみが綯い交ぜになった瞳が写しているのは、間違いなく一期一振と鶴丸国永だ。
主の隣に座る薬研藤四郎が探るように主を見る。
ふるふると主が頭を振ったのは、何かを追い出すためだろう。
それが哀しみなのか嫉妬なのか、どちらかは分からない。
山姥切国広は何となくほっておいてはまずい気がして、主の肩を叩いた。