第2章 演練
それを見守る面々といえば、呆れと軽蔑の目で男を見ている。
「彼は一度はらきよするべきだと思うんだが…」
死んだ目でそう呟いたのは石切丸である。
その横に並んでいる一期一振が頷く。
それを横目に、鶴丸国永は退屈しなくていいと笑う。
「大将は欲望に忠実だからなあ」
「薬研、そんなに遠回しに言わなくていい。あれはただの変態だ。」
山姥切国広が容赦なく言い放った言葉に、反論するものはいない。
唯一異議を唱えるであろう本人は、にっかり青江にJKとは何たるかを語るのに夢中でこちらの会話は聞こえてないだろう。
薬研藤四郎は少し前を歩く己の主とにっかり青江の元に小走りで行き、男の顔を覗き込んだ。
それからこう言ってのける。
「俺っちはそんな大将も大好きだぜ」
にぃ、といたずらに笑う薬研藤四郎に、突然そんなことを言われた男は理解するや否やかんばせを紅く染めた。
この男は存外まっすぐな言葉に弱い。
色恋沙汰でないと分かっていても、見た目のいいこの短刀にそんなことを言われて平然でいられるほど男は経験があるわけではなかった。