第2章 演練
男の思考は一度マイナスに囚われると、どんどん良くない方向へ向く。
鶴丸国永は男の背後へ移動し、黙り込んでしまった男を大して気にかけずドライヤーをかけはじめた。
緩めの風に設定しているのか、風の音は耳障りという程ではない。
髪をその手で触れられるのが気持ちよくて、男は思考を放棄することにした。
「あるじ」
「うん?」
「きみは刀を揃えたいとは思わないのか?」
不意にそんなことを聞かれて、男は目をぱちくりさせた。
「どうした?急に」
「急じゃないさ。古株の者たち以外、皆疑問に思ってることだ。」
「あー、そんな大したことじゃないんだ。…強いて言うなら、俺が不器用だからかな。」
男が言えば、今度は鶴丸国永が目をぱちくりさせる番だった。
意図を図りかねているらしい。
その様子に、本当に大したことじゃないんだと男は苦笑いを浮かべる。
「俺は頭の回転がいいわけじゃないし、何をするにも不器用でな。」
「確かに主はあまり賢くないな。」
「茶化すな。…現在確認されている刀の数は確か四十二口だったか。もしそんなに大所帯になったら、全員とちゃんと接する自身がないんだ。」
男は男の言う通り、確かに不器用だ。
要領があまり良くないと言えばいいのか。
簡単に例えるなら、料理をしながら片付けができないタイプだ。